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家族信託は認知症を発症したあとでもできる?家族信託ができない場合は?

公開日:2022/01/15  最終更新日:2022/03/04

認知症になって判断能力が低下すると、財産を守るために銀行口座の凍結といった処置が取られます。それを防止する意味で、家族信託が有効な手段の一つとしてありますが、認知症を発症したあとからでも利用できるのでしょうか?この記事では家族信託が認知症発症後もできるのかどうかについて、できない場合の対処方法とあわせて解説します。

家族信託は認知症になってからでもできる?

「最近物忘れがひどくなった」といった理由から医師の診察を受け、認知症の診断を受けた場合、財産凍結を防ぐために家族信託を考える人もいるのではないでしょうか。しかし、基本的には認知症の診断を受けた場合、家族信託を始めることはできません

ただ実際は認知症の症状や状態によって変わってきます。大きなポイントとなるのが、判断能力があるかどうか。家族信託をするために必要なのは、自分で物事を判断して決断できる能力があるかどうかのため、「認知症の診断を受けている=判断能力がない」とはいえないのです。

認知症と一口にいっても程度や状態は人それぞれで、中には軽度の認知症でまだ充分な判断能力はある人も実際にいます。判断能力があるかどうかを決めるのは公証役場の公証人です。医師の診断内容や意見、要介護度などは関係ありません。

家族信託を結ぶ際は、公証役場の公証人が家族信託を希望する人の判断能力をチェックします。「名前や住所、生年月日をいえるか」「署名ができるか」「契約内容のメリットやデメリットを理解できるか」「何を誰に委託するのかが理解できるか」などが、公証人が見るポイントです。

認知症の診断を受けていても公証人が契約内容を正しく理解し、判断できる能力を持っていると捉えれば、認知症であっても家族信託を始めることができます

家族信託ができない認知症の場合

前述したように認知症を発症して、なおかつ判断能力がないと捉えられると、家族信託を始めることはできません。その場合はほかの制度となる成年後見制度を利用するのが一般的です。

成年後見制度とは認知症や知的障害、精神障害のある人が詐欺や悪徳商法といった不利益を被らないように、後見人と呼ばれる第三者を付けて財産管理を始めとする各種のサポートしてもらう制度を指します。

後見人の希望は家族のほかに弁護士や司法書士、社会福祉士といった専門職に依頼することもできますが、最終的に誰を後見人にするかは家庭裁判所が決定します。後見人ができることは大きく、次で紹介する身上監護と財産管理の2種類があります。

身上監護

身上監護とはその名の通り、認知症にかかった本人の身の回りに関する監護のことです。介護サービスの利用や施設入所に関わる各種の契約を代わりに行ったり、定期的に訪問して生活状況の確認をしたりします。

財産管理

本人に代わって印鑑や預金通帳などを預かるだけでなく、日常的な入出金の管理も行います。また不動産の売買や処分なども、本人に代わって行うのが特徴です。何をどの程度、後見人が行うのかはケースによって異なります。

また成年後見制度の財産管理は本人のためにしか行えません。たとえば本人の子どものためにお金を使いたいと思っても、基本的には使うことができないのです。

家族信託は認知症発症前にしておいた方がよい

認知症を発症したあとで判断能力がなくなっても、成年後見制度を利用できます。しかし「家族が後見人となっても、本人以外の目的でお金を使えない」「積極的な財産運用ができない」「後見人に対して毎月費用が発生する」といったようなデメリットがあるのも事実です。

家族信託と成年後見制度のどちらがよいかはケースによって異なるものの、人によっては家族信託の方にメリットを感じることもあるでしょう。そのため将来的に財産管理を家族に任せたいと思っている場合は、判断能力があるうちから家族信託を結んでおくことが大切です。

家族信託がより効果的になる人

最後に家族信託の利用がより効果的になる人について紹介します。

家族にだけ財産管理を任せたい人

まずは自分の家族にだけ財産管理を任せたい人です。前述したように成年後見制度の場合は、必ずしも自分の家族が後見人となるとは限りません。希望を出したとしても、最終的に誰を後見人とするかは家庭裁判所が決めるためです。一方で家族信託の場合、判断能力があるうちなら希望する家族へ信託をお願いできます

孫やそれ以降の世代を指定して財産を引き継ぎたい人

家族信託では孫やそれ以降の世代を指定して、財産を相続させることができます。たとえば直系血族にだけ限定して相続させたい場合などで、家族信託は有効です。

 

「認知症になった=家族信託を始められない」わけではありません。ポイントは判断能力があるかどうかです。公証役場の公証人が本人に充分な判断能力があると判断すれば、認知症を発症したあとでも家族信託を始めることは可能です。しかし、将来的に財産管理を家族に任せたいと思っている場合は、認知症を発症する前に家族信託を結んでおくことをおすすめします。

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