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大した財産はなくても家族信託は必要?一般家庭での家族信託活用例

公開日:2023/08/15   最終更新日:2023/08/22

家族信託は、財産を所有する委託者が健康なうちに、信頼できる家族に財産を管理・運用する権利を与える仕組みです。これにより、委託者が加齢や認知症などにより判断能力が衰えた場合でも、委託者の意志に沿って資産運用を継続し、利益を得ることが可能になります。今回はそんな家族信託を一般家庭で活用する例を紹介します。

一般家庭でも家族信託は必要?

「信託」という言葉から「投資信託」を連想する方は多いのではないでしょうか。投資信託は、資産運用会社の専門家に株式や債券などの運用をまかせ、資産形成を試みる制度です。

そのイメージを引きずって「信託」は資産家でなければ縁がないと思うのは間違いです。「家族信託」も資産の保護・運用を目的としていますが、資産を管理・運用するのは信頼できる家族、もしくは親族です。

そのため管理にかかる高額な報酬はかからず、誰でも気軽に利用できるのが特徴です。家族信託の大きな目的は、家族の財産を家族で守り運用していくことです。

財産所有者(委託者)が元気なうちに、家族(受託者)に財産の管理や運用法を指示することで、加齢や認知症などで判断力が低下した後も、継続して資産運用益を得られます。

財産がほとんどない、不動産がない、財産所有者が若くて健康、信頼できる親族がいない、既に財産名義を子どもや孫に移しているといった場合を除いて、一般家庭でも家族信託を利用するメリットがあります。

一般家庭でも家族信託を行うメリット・デメリット

一般家庭でも家族信託を利用するメリットはつぎのとおりです。

財産所有者の認知症対策になる

財産所有者が認知症などを発症し判断力が欠ける状態になったと銀行がみなした場合、口座が凍結されてしまいます。これは顧客を守るための措置ですが、銀行口座が凍結されると家族でも預金を引き出せない状態になってしまいます。このような事態を防ぐために役立つのが家族信託です。

事前に家族信託で財産所有者(委託者)が信用できる家族(受託者)との間で財産の管理・運営の方法を取り決めて契約を結ぶことで、財産の管理権を受託者がもつことになります。これにより委託者が認知症になっても、これまで通り委託者の財産の管理・運用を続けることが可能になります。

また財産を運用することで得られる利益は委託者のものです。これにより委託者が介護や治療が必要になった際に自身で費用を負担でき、家族の負担を減らせるというメリットがあります。

遺産分割を円滑化できる

家族信託には財産を所有する者(委託者)と管理を担う者(受託者)の間で契約を交わす「契約信託」以外に、遺言機能をもつ「遺言信託」があります。

遺言信託は、相続人が複数存在する場合など、遺産分割に関する紛争やトラブルが発生する可能性がある場合に効力をもちます。家族信託で遺言を作成し、委託者が健全な状態の時に承継者を決めておけば、相続が発生した場合の遺産分割協議が不要になります。

遺言機能をもつ家族信託は、遺言よりも効力があるのが特徴です。遺言が作成された後で家族信託を締結した場合も、家族信託を締結した後で遺言が作成された場合も、いずれも家族信託が優先されます。そのため、遺産分割を事前に明確化でき、無用なトラブルを防げます。

家族信託するデメリットとは

一方、一般家庭で家族信託を利用するデメリットとして、申請書類の作成のために法律や登記に関して学ばねばならないことや、複雑な手続きをしなくてはならないことが挙げられます。

知識が浅い状態のまま独力で作成に取り組み、誤った設定で運用してしまうと、想定していない税金の発生やトラブルにつながる可能性があるため、専門家に相談することをおすすめします。

また、財産の管理や運用にかかる手間や責任を考慮し、誰も受託者になりたがない可能性や、財産所有者である祖父母や両親に契約の同意が得られないという可能性もあります。

とくに「大した財産はない」と財産所有者が考えている場合は、契約の手間やコストを嫌ったり、財産を管理・運営する受託者に対して不信を感じたりするケースもあります。

財産が少なくても大事な未来を守る一般家庭の家族信託活用

家族信託は財産が少ない一般家庭において、決して無縁な制度ではありません。とくに財産所有者が不動産を所有している場合や、認知症の発症など判断能力低下の恐れが高い場合は、家族信託の活用は欠かせません。

意思能力がないと判断されると、銀行口座が凍結されたり、不動産売却ができなくなったりするためです。日本が超高齢化社会に突入して以来、口座にお金があっても凍結されてしまい、引き出し・解約ができないという問題が多発しています。

財産所有者が認知症になり、介護費や医療機関などに入所する費用が必要になっても、本人のお金を動かせないと、家族の負担はより大きくなります。このような事態を未然に防ぎ、財産所有者本人や家族の大事な未来を守るためにも、一般家庭で家族信託を導入することは大きな効果があります。

まとめ

大きな資産がない一般家庭での家族信託活用によるメリットとデメリットを紹介しました。家族信託は、財産所有者(委託者)が元気なうちに、家族(受託者)に財産の管理や運用法を指示することで、加齢や認知症などで判断力が低下した後も、継続して資産運用益を得られる仕組みです。

財産所有者が認知症になると、銀行口座が凍結したり、不動産売買契約ができなくなったりします。これらのリスクは家族信託を利用することで回避できます。

また遺言機能を用いて家族信託の契約を締結することで、通常の遺言よりも優先させられます。これにより、遺産分割を事前に明確化でき、無用なトラブルを防げます。

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