家族信託は危険なのか?失敗やトラブル事例を知って備えよう!
近年、高齢化に伴い、家族信託という言葉が注目されるようになりました。ご自身が認知症になっても、家族が財産を管理・運営してくれるので、これまでの成年後見人制度よりも柔軟な相続対策が出来ます。しかし、運用方法を間違えてしまうと想定外の税金が掛かってしまうので、トラブルが起きないよう実際の事例を含めご紹介していきます。
家族信託が持つ「リスク」とは
受託者に権限が集中してしまう
財産管理や運用、処分などの権限が、受託者に集中してしまいます。実際、利益を受けるのは受益者ではありますが、家族信託は、まだあまり広く知れわたっていないので、特定の相続人(受託者)に便宜が図られているのではないか、と周囲に勘違いされてしまう傾向があります。
損益通算が使えない
不動産所得で赤字が出た場合、他の所得の黒字から差し引いて計算をする損益通算が使えますが、家族信託の場合は、賃貸アパートなどの経営で赤字が出た場合、ほかの不動産所得との損益通算が出来ません。家族信託を使ったがために、想定外の税金が発生してしまうので、税理士をしっかりと交えたシミュレーションが大切です。
税務署への申告手続きが必要
信託財産からの収益が1年以上の計算期間で3万円、または1年未満でも1万5,000円以上あった場合、毎年1月31日までに信託計算書と信託計算書の合計表を、税務署に提出しなければなりません。また、申告義務は受益者にありますが、信託財産の利益と自らが管理している不動産の利益は、切り分けて計算をしなければいけません。
受託者に身の上監護権がない
家族信託には身の上監護権がないため、受託者は医療や介護などの法律行為が出来ません。家族が受託者であれば特に支障はありませんが、血縁の遠い親戚や第三者が受託者の場合は、法律行為が制限されてしまうので、いざという時に困ってしまいます。
信託出来る財産の制限
信託出来る財産と出来ない財産があります。現金、不動産(農地以外)、非上場株式、特許権、商標権は信託出来る財産となりますが、銀行預金(預金債権)、農地、一部の信託銀行は信託出来ません。その他、委託者固有の権利であります年金や生活保護受給権、借金なども信託が出来ません。
30年ルールによる信託の強制終了
家族信託では、一族が財産を継承し続けられるよう、受益者連続型信託の契約が可能です。しかし、信託法に信託契約締結から30年経過したときの受益者、または次の受益者が死亡すると終了するという30年ルールがあります。信託開始から30年経つと、次の受益権の取得は1回しか出来ないので、受益者連続型信託を契約したとしても30年で強制終了となります。
高額な初期費用が掛かる
専門家への相談料及び着手金として50万~100万円、公正証書作成費用として15万円、不動産の信託登記10万円と初期費用が掛かりますので、資金を用意しておくことに注意が必要です。
家族信託にありがちなトラブル・失敗例
公正証書を作成しなかったためにトラブル発生
法律上では、家族信託の契約書は私文書でも有効となりますが、財産の管理者や利益の帰属先を決定する大切な文書になるので公正証書にしておくことが必要です。法的な有効性が担保されるからです。家族間の契約ではありますが、法律行為に違いはないので契約書は公正証書にしておきましょう。
想定外の税金が発生
委託者以外に受益権を移転させたため、受益権に対する贈与税が発生してしまったり、信託財産以外の財産を損益通算できないことを知らず、高額な所得税が発生してしまったり、受益者の不動産所得が増え続けたため、高額な相続税が発生してしまうことがあります。家族信託は相続税対策用の仕組みになってはいないので、注意が必要です。
利用前にメリット・デメリットをよく理解しておこう
主なメリット
主なメリットとしては、委任や遺言の機能があること、贈与税が発生しない、契約後にも受託者を変更できたり、成年後見人制度より柔軟に運用ができたりといったメリットは多数あります。
家族信託のデメリット
反対にデメリットとしては、銀行手続きや身上監護ができない、家族信託に精通した専門家が少ないことが挙げられます。従来の成年後見人制度では法律上のこともできるため、家族信託のデメリットを理解したうえで契約することがおすすめします。
家族信託のメリット・デメリット、また失敗例などをご紹介しました。ここ数年で注目されるようになった制度ですので、専門家が少なく心配になってしまう方も多いでしょう。しかし、成年後見人制度より入り安く運用がしやすいのでしっかりと相談をして家族間で話し合ってみましょう。相続については、遠い親戚の方もその時になると急に連絡が来たり話に入ってきたりしますので、親戚の方にもしっかりと話をして、理解してもらったうえでの契約がおすすめです。あとでトラブルにならないよう、先手で対応していきましょう。
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